2013年1月8日火曜日

チャリオンの影


ヴォルコシガンサーガのビジョルドが綴る中世ファンタジィ三部作。

今作はチャリオンの影、影の棲む城、影の王国という影シリーズ(実際には五神教シリーズ)ともいうべき中世ファンタジィ三部作の一作目にあたる。舞台はイベリア半島を上下反対にしたような地勢で、北方沿岸に四神教を奉じる五公国があり、その南方に五神教を奉じるチャリオンらの国々があって南北で長年対立しているという状況。

主人公はしょっぱなから尾羽打ち枯らしたみすぼらしい格好で現れ、寒さと疲労、空腹、さらには大怪我も満足に癒えてないというなんとも読んでいてつらい鬱々とした状況で物語が進行する。今作はヴォルコシガンであったような軽妙さは鳴りをひそめ全編そのように疲労や前方にたちこめる暗雲がこれでもかと描写されるので陰鬱な雰囲気が充満している。そのため主人公が華々しく活躍する活劇のようなものはなく、どちらかというと忍従を強いられる展開の連続となっている。

舞台設定はビジョルドらしく五神教やそれにまつわる風俗、風習にいたるまで大変によく作りこまれていてチャリオンの世界を堪能させてくれる。

全体としてすかっとする話ではないながらさすがの筆力というかぐいぐいとひきつける魅力は健在で次へ次へと先が気になって仕方が無かった。二作目の影の棲む城は陰鬱さが薄れ軽妙さが増すので面白さが倍増している。三作目は未読。

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